書籍「実験思考」のデータから見る、価格を顧客に委ねた結果は?

書籍「実験思考」のデータから考える、価格を顧客に委ねた結果、そして390円の紙の本と、0円の電子書籍、どちらを読んだ人の方がお金を払ったのか、の意外な結果

 

今回は、「実験的な試み」についてピックアップします。

 

Bankという会社を創業した、光本勇介さんという方の「実験思考」という書籍があります。

 

この書籍は、紙の本は原価、電子書籍は0円で販売し、書籍の代金は、原価の390円だけ。

 

そして、面白いと思ったらお代を払ってください、支払う金額が大きいと特典も大きくなりますよ、というコンセプトです。

 

意外だったのが、390円を払って紙の書籍を買った人と、電子書籍で0円で購入した人と、支払いを行った比率でした。

 

https://jikken-shiko.com/QR/report/

 

なんとなくのイメージでは、電子書籍で購入した人の方が支払い比率が高いのかな、と感じていましたが、実際のところ支払いを行った比率は、紙の書籍を買った人が70%、電子書籍は30%。

 

正直逆だと思っていましたし、紙からの流入と電子書籍からの流入もきちんと計測していたのだ、というところに「さすが」と感じ、また結果に対する意外さも感じました。

 

紙から流入している層は、既に390円という原価を支払った、一方電子書籍は、無料でダウンロード、支払いをしていない。

 

つまり、一度財布を開いた層の方が、お金を支払っている比率が高いわけです。

 

また、実際に支払いを行った人数は、2,259人(筆者もその一人です)。

金額が大きいと大きな特典があるということを差し引いても、支払いを受けた総額は100,240,200円、つまり約1億円です。

 

普通の売り方であれば、1冊1,500円で売る(税込みなら1,620円)とすると、61,877人に売る必要があります。

 

(余談ですが、全体の発行部数、電子書籍ダウンロード実数の中で、それぞれ何%が支払いを行ったかというデータがわかるとさらに面白いと思います。)

 

このように価格をあえて付けない(代わりに特典をつける)という手法は、書籍にせよ、クラウドファンディングにせよ、様々なところで出てくるかもしれません。

 

今回は完全に一つの大きな実験で、著者の光本氏はこのデータをもとに、新たな実験を考えていると思いますが、一つ思うのは、あれだけ書店が縮小しているという現状でも、70%の割合の人が、紙の書籍からリーチしている、つまり

 

・書店でリーチする層はまだまだ多い

・一度財布を開いた人は、価値を感じればより支払いをしてくれる可能性がある

(どちらも推測ですが)

 

ということも感じ取れます。

 

いろんな意味で面白い実験データだと思います。

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